恋の種をひとつぶ


ーー大熊。


悠真ちゃんの口から出たその名前に、わたしは思わず、ビクリと体をふるわせた。


ゆっくり、振り返る。


いやがおうでも目に入る。窓側、1番うしろの席。机にぺたりと伏せている、大きなからだ。


彼の名前は、大熊久司くん。


大熊くんは、学年で一番、身長が高い男子だ。


柔道部で鍛え上げているという、がっしりした体つき。


高い鼻に、くっきりした二重の目から飛び出す、するどい眼光。


彼のまわりにはいつも、簡単には近寄れないオーラがただよっていて……


……それに。



「大熊さぁ、なーんかまた、ケンカしたらしいよ?からんできた他校の不良を、返り討ちにしたって!!」



こそっと悠真ちゃんが言ったように、ケンカでは負けたことない、とか。


不良を大勢従えてる、とか。


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