恋の種をひとつぶ
もうすこし暗い時間帯だったら、ちょっとこわいかもしれない、と思った。
夜の学校なんて、怖い話の鉄板シチュエーションだ。
お化けとか怪奇現象とか、そういうの、すっごく苦手なんだよね……。
そんなことを考えながら、教室に走りこもうとして……
「~ひっ!?」
わたしは、みじかい悲鳴を上げてしまった。
お化けがいたわけじゃない。
でも、教室は空っぽじゃなかった。人がいた。
窓際の、一番後ろ。机に伏せているおおきなからだ。
その人物がだれなのか、すぐにわかった。
「………っ、」
……大熊くんだ。
わたしはかたまった体勢のまま、ごくりとつばをのみこんだ。
大熊くんは、昼休みと同様、ぺたりと体を半分に曲げて、机に伏せていた。