僕と舞ちゃん
週が明け僕はいつものように和美を自転車の後ろに乗せ学校へと向かっていた。
「慎ちゃん」
「何?」
「この前の人の話っておばさんに聞いたの?」
「何がさ」
僕は態とそういう言い方をした。
「もう!だからこの前の人がおばさんの好きな人かどうかって話よ」
僕は和美にその事を言おうかどうか迷っていた、本当は誰かに聞いて欲しい気持ちはあったが、その話をするのが嫌だった。
「ねえ、どうなの?」
「実はさ、舞ちゃんに聞いたら付き合ってくれって言われてるらしいよ、あの人から」
「うわ、やっぱり~?私もそうじゃないかと思ったんだ。おばさんて綺麗だし、最近特にお洒落してるからそうだと思ったんだ、私」
和美は自分の予想が当たった事が嬉しかったようだ。
「お前な、まったく人の気持ちも知らないで。俺にしたら大変な事なんだぜ」
「あ、そうか、そうだよね、ごめん。でも悪い事じゃないじゃん」
「何でさ」
「だって慎ちゃんにもお父さんが出来る訳だし」
「馬鹿、俺の親父は死んだ親父だけさ、奴は赤の他人」
「もしかして反対なの?」
「反対とかそういう問題じゃないよ。俺の親父は死んでるし、舞ちゃんは俺の母親だけどあいつとはどんな事があっても血は繫がらないって事さ」
僕は支離滅裂な事を言った。
「なあんだ、反対なんだ」
「何だとは何だよ。大体お前が俺の立場だったら賛成出来るのかよ、こんな話に。いきなり知らない奴が自分の生活に加わるんだぜ、それも何の前触れも無しに」
僕は少し強い口調でそう言った。それは和美に言ったものの本当は舞ちゃんに対して言いたかった僕の本音だったかもしれない。
「確かにそうだよね、でも私が慎ちゃんの立場だったらそりゃ、少しは複雑だけど顔で笑って心で泣いて賛成するかな」
「何だそりゃ」
「だって冷静に考えたらおばさん可哀想じゃない?今迄ずっと一人で頑張ってきて」
「そ、それはそうだけどさ」
それを言われると僕は返す言葉が見付からなかった。
「それに今は良いとしても、慎ちゃんが将来私と結婚して暮らすようになったらおばさん一人になっちゃうんだよ」
「お、おいおい何でそこから俺がお前と結婚するって話になるんだよ」
「何よ、慎ちゃん私の事が好きじゃないの」
「そ、そうは言ってないだろ、ただ俺達はまだ高校生なのにいきなりお前がそんな先の話をするからさ」
ひょんな事から話は横にずれてしまったが、しかし和美にそう言われて僕は今迄考えて無かった事にハッとしてしまった。
確かにこのままだったら将来的に舞ちゃんは一人で暮らす事になる、そう考えた僕は舞ちゃんがとても可哀想になった。誰も居ない家で誰とも話をしないで一人で食事をし、テレビを見てる、そんな寂しそうな舞ちゃんの姿をつい想像してしまった。
そしてこの前舞ちゃんが遅かった時にもし舞ちゃんに何かあって自分一人が取り残されたらどうしようと感じた言い表しようの無い寂しさを思い出した。
只、確かにそうかもしれなかったが、それでも親父の事を考えると納得出来なかった。
親父というより舞ちゃんが親父以外の男に心を奪われる、それが人間として酷い気がした。
舞ちゃんはそんな女じゃないと思っていた、いや思いたく無かった。
「和美さ」
「なに?」
「今の話し、もし俺と和美が将来結婚したとしてさ」
「うん、それで?」
「それで俺が先に死んだら和美もやっぱり誰かと付き合いたいとか、再婚とかする訳?」
僕は意地悪な質問だと思ったがどうしても聞いてみたくなった。
「う~ん、どうかな?実際その時になってみないと判らないけど・・」
「そう言うって事は可能性はあるって事か」
「勿論今は判らないけど・・でも寂しさに負けちゃうかもしれないな、そうなったら」
「寂しさ?」
「だって最初から一人だったらそんな事も感じないかもしれないけど、好きな人と結婚してその旦那さんが先に死んだりしたら一人が余計に寂しいと思うもん」
「寂しさかあ・・」
それを聞いても僕はピンと来なかった。だって舞ちゃんはいつも明るく元気だったから。
「だって喧嘩だって一人じゃ出来ないし、何かで悩んだ時も一人で答えを出さないとならないじゃない?それって結構大変だと思うよ」
それを聞いた僕は和美の方が僕よりずっと大人だと思った。
「そうか、そうかもな」
そう言われてみたら入学式や卒業式の時の舞ちゃんは、一人で参列し確かに寂しかったかもしれない。
「慎ちゃんも大人なんだからもっとおばさんの事を考えないと駄目だよ」
「舞ちゃんの事をか・・・」
僕はそれだけ言うのがやっとだった。
でも舞ちゃんは今どう思っているんだろ?それにどうしたら良いか判らないと言っていたあの言葉の意味は一体何だったのだろう?
「慎ちゃん」
「何?」
「この前の人の話っておばさんに聞いたの?」
「何がさ」
僕は態とそういう言い方をした。
「もう!だからこの前の人がおばさんの好きな人かどうかって話よ」
僕は和美にその事を言おうかどうか迷っていた、本当は誰かに聞いて欲しい気持ちはあったが、その話をするのが嫌だった。
「ねえ、どうなの?」
「実はさ、舞ちゃんに聞いたら付き合ってくれって言われてるらしいよ、あの人から」
「うわ、やっぱり~?私もそうじゃないかと思ったんだ。おばさんて綺麗だし、最近特にお洒落してるからそうだと思ったんだ、私」
和美は自分の予想が当たった事が嬉しかったようだ。
「お前な、まったく人の気持ちも知らないで。俺にしたら大変な事なんだぜ」
「あ、そうか、そうだよね、ごめん。でも悪い事じゃないじゃん」
「何でさ」
「だって慎ちゃんにもお父さんが出来る訳だし」
「馬鹿、俺の親父は死んだ親父だけさ、奴は赤の他人」
「もしかして反対なの?」
「反対とかそういう問題じゃないよ。俺の親父は死んでるし、舞ちゃんは俺の母親だけどあいつとはどんな事があっても血は繫がらないって事さ」
僕は支離滅裂な事を言った。
「なあんだ、反対なんだ」
「何だとは何だよ。大体お前が俺の立場だったら賛成出来るのかよ、こんな話に。いきなり知らない奴が自分の生活に加わるんだぜ、それも何の前触れも無しに」
僕は少し強い口調でそう言った。それは和美に言ったものの本当は舞ちゃんに対して言いたかった僕の本音だったかもしれない。
「確かにそうだよね、でも私が慎ちゃんの立場だったらそりゃ、少しは複雑だけど顔で笑って心で泣いて賛成するかな」
「何だそりゃ」
「だって冷静に考えたらおばさん可哀想じゃない?今迄ずっと一人で頑張ってきて」
「そ、それはそうだけどさ」
それを言われると僕は返す言葉が見付からなかった。
「それに今は良いとしても、慎ちゃんが将来私と結婚して暮らすようになったらおばさん一人になっちゃうんだよ」
「お、おいおい何でそこから俺がお前と結婚するって話になるんだよ」
「何よ、慎ちゃん私の事が好きじゃないの」
「そ、そうは言ってないだろ、ただ俺達はまだ高校生なのにいきなりお前がそんな先の話をするからさ」
ひょんな事から話は横にずれてしまったが、しかし和美にそう言われて僕は今迄考えて無かった事にハッとしてしまった。
確かにこのままだったら将来的に舞ちゃんは一人で暮らす事になる、そう考えた僕は舞ちゃんがとても可哀想になった。誰も居ない家で誰とも話をしないで一人で食事をし、テレビを見てる、そんな寂しそうな舞ちゃんの姿をつい想像してしまった。
そしてこの前舞ちゃんが遅かった時にもし舞ちゃんに何かあって自分一人が取り残されたらどうしようと感じた言い表しようの無い寂しさを思い出した。
只、確かにそうかもしれなかったが、それでも親父の事を考えると納得出来なかった。
親父というより舞ちゃんが親父以外の男に心を奪われる、それが人間として酷い気がした。
舞ちゃんはそんな女じゃないと思っていた、いや思いたく無かった。
「和美さ」
「なに?」
「今の話し、もし俺と和美が将来結婚したとしてさ」
「うん、それで?」
「それで俺が先に死んだら和美もやっぱり誰かと付き合いたいとか、再婚とかする訳?」
僕は意地悪な質問だと思ったがどうしても聞いてみたくなった。
「う~ん、どうかな?実際その時になってみないと判らないけど・・」
「そう言うって事は可能性はあるって事か」
「勿論今は判らないけど・・でも寂しさに負けちゃうかもしれないな、そうなったら」
「寂しさ?」
「だって最初から一人だったらそんな事も感じないかもしれないけど、好きな人と結婚してその旦那さんが先に死んだりしたら一人が余計に寂しいと思うもん」
「寂しさかあ・・」
それを聞いても僕はピンと来なかった。だって舞ちゃんはいつも明るく元気だったから。
「だって喧嘩だって一人じゃ出来ないし、何かで悩んだ時も一人で答えを出さないとならないじゃない?それって結構大変だと思うよ」
それを聞いた僕は和美の方が僕よりずっと大人だと思った。
「そうか、そうかもな」
そう言われてみたら入学式や卒業式の時の舞ちゃんは、一人で参列し確かに寂しかったかもしれない。
「慎ちゃんも大人なんだからもっとおばさんの事を考えないと駄目だよ」
「舞ちゃんの事をか・・・」
僕はそれだけ言うのがやっとだった。
でも舞ちゃんは今どう思っているんだろ?それにどうしたら良いか判らないと言っていたあの言葉の意味は一体何だったのだろう?