世界で一番ソラに恋した。
「おい、雨笠っ」

名前を呼ばれたけれど、もう立ち止まることもしたくなかった。

カバンを投げつけたせいで、自転車で帰れなかった私は、全力で奈菜のバイト先まで走った。

茜色に染まった空が、私に長い影を作る。

私が欲しいのは、長い影じゃなくてあと五センチの身長なのに。


小さくて、子供扱いされたり、可愛い服のサイズが無かったり、良いことなんて殆どなかったんだから。


「でも、あゆって胸でかいよね?」
「ひゃ!?」

泣きついた先は菜奈のバイト先の商店街の中にあるカレー屋さん。
ラッシーを飲んでいた私は、慌てて胸を抑えた。

いや、平均的だと思う。

「そんなに気にすることじゃないけど、気にしているあゆを笑うなんて、酷いよね。佐崎ったら」

ピンクのミニスカチェックのウエイトレス服に、白いエプロンの奈菜は、苦笑する。
こんなに奈菜の可愛いウエイトレス姿が見れるのに、カレー屋は閑古鳥が鳴いている。
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