世界で一番ソラに恋した。
でも、それだけで名前を間違えるなんて私、どんだけテンパってたんだろう。
まあ、絶対に見つからないって思ってたから、思いっきり油断した私も悪いかもしれないけど。
「カバン取り返して。鍵の事まだ知られてなかったら持ち帰らなきゃ!」
「おー。頑張れ頑張れ」
何で、鍵がないと入れない屋上に佐崎くんも居たのか分からないけど、私も秘密だらけだからおあいこだよね。
「ようし。まだ居るかなあ。帰ったかなー」
「遅くなるなら自転車で迎えに行ってあげるから、連絡しなよ」
「うん。でも、携帯はカバンの中だから、連絡できなかったらごめんね」
奈菜が、ぽつりと大丈夫かよって言ってたのがちょっと可愛かった。
でも、カバンを取り返すだけ。
鍵の存在を隠すため。
私は茜空の下、また学校を目指した。
ここにページを追加
ここに章を追加
16ページ
編集 画像 削除
「あれ? あゆじゃん」
「アンタ、結構前に帰らなかったけ?」
「忘れ物?」
校門前で、さっきまで一緒に喋っていた、愛に琴音に沙希たちに出くわした。
「あはは、か、カバン」
真っ赤になりながらそう言うと、三人は爆笑してくれた。
「一人で大丈夫―?」
「うん。場所は分かるから」
「帰りは自転車なら、一緒に帰らなくても平気?」
「あはは。平気だよ! こう見えて高校二年生ですからね!」
ふふんとVサインを送ると、三人は安心したように手を振ってくれた。
けれど、問題の屋上までは段々と気が重くなっていく。
こんなに遅くなって、野球部以外帰りだした校舎もグランドもちょっと怖くなってきた。
急いで――せめてカバンだけでもあって欲しい。
あと15分で学校も追い出されてしまう時間で、家もそろそろ食卓にご飯が並びだす頃だ。
急がなきゃ。