世界で一番ソラに恋した。

でも、それだけで名前を間違えるなんて私、どんだけテンパってたんだろう。

まあ、絶対に見つからないって思ってたから、思いっきり油断した私も悪いかもしれないけど。

「カバン取り返して。鍵の事まだ知られてなかったら持ち帰らなきゃ!」
「おー。頑張れ頑張れ」

何で、鍵がないと入れない屋上に佐崎くんも居たのか分からないけど、私も秘密だらけだからおあいこだよね。

「ようし。まだ居るかなあ。帰ったかなー」

「遅くなるなら自転車で迎えに行ってあげるから、連絡しなよ」
「うん。でも、携帯はカバンの中だから、連絡できなかったらごめんね」


奈菜が、ぽつりと大丈夫かよって言ってたのがちょっと可愛かった。
でも、カバンを取り返すだけ。
鍵の存在を隠すため。

私は茜空の下、また学校を目指した。


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「あれ? あゆじゃん」
「アンタ、結構前に帰らなかったけ?」
「忘れ物?」

校門前で、さっきまで一緒に喋っていた、愛に琴音に沙希たちに出くわした。
「あはは、か、カバン」

真っ赤になりながらそう言うと、三人は爆笑してくれた。

「一人で大丈夫―?」
「うん。場所は分かるから」
「帰りは自転車なら、一緒に帰らなくても平気?」

「あはは。平気だよ! こう見えて高校二年生ですからね!」

ふふんとVサインを送ると、三人は安心したように手を振ってくれた。

けれど、問題の屋上までは段々と気が重くなっていく。


こんなに遅くなって、野球部以外帰りだした校舎もグランドもちょっと怖くなってきた。

急いで――せめてカバンだけでもあって欲しい。


あと15分で学校も追い出されてしまう時間で、家もそろそろ食卓にご飯が並びだす頃だ。

急がなきゃ。
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