世界で一番ソラに恋した。


遠くで、ちびっこ太鼓の音が聴こえてきて、

目の前の海には、ゆらゆらと船が浮かぶ。


海辺には、もう人が溢れかえっていて、私とソラ君も奈菜のカレー屋さんへ行こうにも、その場で立ち止まって花火を待っている人たちでなかなか進めないでいた。

警備の人が前へ進んで下さいというのに、満員電車のように動かないで揺れるだけ。


「くっそ。カレー屋の露店まであと10Mぐらいなのに」



「ソラ君……。ごめんね。お父さんに――あんな言葉言わせて」


「んん。ってか、言えてすっきりしたから。ありがとう。言いたくなくてぐちぐちしてたから、あゆに背中を押して貰えた感じ」

そう笑うくせに、目はまだウサギみたいに真っ赤で。

ソラ君は本当に繊細で、簡単に壊れてしまいそうな硝子細工みたい。


だから、届かない空のような距離がよかったのかもしれない。
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