世界で一番ソラに恋した。
星がチカチカ瞬いて、風にぶつかりながら、夜を切り裂くようなジェットコースター。
「ソラ君、怖い!」
「はは」
「そーらーくん!」
ぎゅっとソラ君の背中を抱きしめると、シトラス系の爽やかな匂いがした。
香水だろうか。
柔軟剤だよね?
思わず、クンクンと嗅いでしまいたくなるようなソラ君の匂いに、顔を埋めて満たされて行く。
こんな風に女の子を後ろに乗せるのは、慣れてるのかもしれない。
いつだったか、皆がうちのクラスのサッカー部は人気があるって言ってたもん。
こんなにわくわくしてしまった自分に、別に深い意味はないのだと言い聞かせる。
「なあ、雨笠、お前の家って何処?」
「発進する前に聞いてよー。こっちの坂だよ」
二つに別れた未知の左を指さすと、『うそ』と小さく言葉を漏らした。
「大丈夫。サッカー部のエースなら、私ぐらい乗ってても坂道を行けるよ」
「まじかよ」
学校で私に偉そうに乗ってと言っていたソラ君の姿は何処へやら。
面白くてつい、笑ってしまった。