世界で一番ソラに恋した。
「おりぁあああああ」
「フレーフレー」
フラフラになりながら、ソラくんは頑張って私を乗せたまま自転車を漕いで行く。
顎を伝う汗がちょっと格好良いなって思ってしまう。
いや、格好良いんあだけどね。
結局、話しかけられない雰囲気で、坂を登りきってくれた。
私は背中から応援しながら、――頑張るソラ君をこっそり尊敬しちゃったのは内緒だ。
「あはは。ソラ君って凄いね」
「まあ、約束だからな」
自転車に跨ったまま、まだ荒くなった息を整えているソラ君は、髪をバサバサして汗を飛ばす。
「約束なら、私の鍵、返してほしいんだけどなあ」
「それは、駄目」
爽やかに笑うと、私を見る。
「あんな綺麗な場所、雨笠だけ独り占めってずるいじゃん。だから、駄目」
駄目。
別に、ソラ君の許可なんていらないのに、まるで自分だけのけものにされて様に寂しげにそう言う。
「だから、また明日、あそこで会おう」