世界で一番ソラに恋した。


そんな事、勝手に決めないで。

そう言いたいのに。


ソラ君の声は、それを言わせないような切ない、震える声だった。

「ソラ君、うち此処だよ」

小さい庭で、芝犬のラブが私に気付いて尻尾を振って鳴き出した。
網戸にした窓からは、――私の好きなハンバーグの匂いがしているし、弟がテレビの声にわせて、手を叩きながら笑っているのが聞こえる。

あああ。近所迷惑な。
「しかも、灰人(かいと)ったら、また自転車横に止めてる! 横に止めたら私の自転車入らないじゃんか」
車の奥の物置前に、自転車が
斜めに止めてるのを苛々しながら自転車から降りて真っ直ぐに直しに行こうとして、自転車から降りないソラ君に気付いた。

「ソラ君?」


「あ、ごめん。ボーっとしてた。汗かいたら眠くなっちゃって」
「なるほど、タオル貸そうか?」

カバンから取り出して差し出すと、ソラ君はそのピンク色のタオルの頬を寄せた。
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