世界で一番ソラに恋した。
「いいね。雨笠の家は、――良い匂いがして楽しそう」
「そう? 弟なんて超生意気だし、私の身長吸っちゃったしで喧嘩も絶えないよ」
「いいじゃん。喧嘩出来るなら」
「?」
ちょっとずれているような発言に首をかしげつつも、ソラ君は自転車から降りると、私のピンクのタオルを首に巻いた。
「これ、貸して」
「いいよ。返すのはいつでもいいし」
「――はは。今優しいのはちょっとズルイ。俺、ときめきそう」
と、きめく!?
私の方こそ、ソラ君の発言にいちいちどう返していいか分からず慌ててるんですけど!
「じゃあ、ソラ君。明日はちゃんと鍵、返してよ」
「それは――また明日あの場所で話してからね」
振り返らないで、手をヒラヒラ振ったソラ君。
その長くてすらりとした手は、空に浮かぶ月に届きそうだった。