世界で一番ソラに恋した。
奈菜からそんな話をされると思わなかったから動揺してしまった。
「だって屋上はアンタの秘密の場所なのに、そこに入ろうとしてくるなんてさ、アンタに気があるんじゃない?」
「それは全くないよ。一ミリもない。私は可愛くもないし奈菜みたいに胸も身長もないし」
「あーあ。この子の頑固なネガティブを何とかしてくれないかな」
立ち止まった奈菜は、振り返って私に笑う。
「どっちが先に彼氏できるか勝負だからね」
「勝負ッて私は別にソラくんなんて」
「はは。じゃあね」
屋上に続く階段手前で、ひらりと奈菜は弾き返して行った。
私は一人、処刑台に登る気持ちで階段を上がっていく。
別に悪いことはしていないんだけど。
お昼休みに見たソラ君の笑顔を思い出すと、鍵を返してときつく言えないような気がして。
どうしていいのか、――上手に言えなくて苦しい。
そんなに悪い人に見えないけど強引で、距離が難しいんだもん。
屋上へのゲートである机や椅子がちょっとだけズレテいた。
大男がゲートをくぐったのだと分かるぐらいに。