世界で一番ソラに恋した。



奈菜は奈菜で、ちょっと気が強いし自分の信念を曲げない人だから困ってしまう。

「そうか。じゃあ、連絡くれないなら教室まで行って呼びだすって言っておいて」

「あはは、了解」

びっくり。
真面目で冷静そうな岳君が、こんなに情熱的な性格を隠し持ってたなんて。


それとも、花火大会が近いから?

パンを買って戻ろうとしていたら、渡り廊下の向こうにソラ君がいた。

ぼーっとこっちを見て立っている。

「ソラ君」

さっきの御礼を言わなきゃと近寄ったけど、途中で立ち止まり、買ったパンを地面にポトポト落としてしまった。


「そ、ら君?」


「何を話してた?」

無表情で私を見下ろすソラ君は、固まってしまうほど怖かった。

知らない人みたいで、怖い。

「岳君? ちょっと恋愛相談に乗ってたの」
奈菜の名前を出せなくてはぐらかすけど、ソラ君の顔は無表情のままだ。
「――――二度と話さない方がいい」


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