世界で一番ソラに恋した。
「ばっ 俺は受験生だぞ! 言うな! 心に秘めて卒業式に告るんだから」
「奈菜みたいな美人にはその時期には彼氏ぐらい居そうだけどいいんすか?」
「よくねーよ!」
うりゃっと首に手を回されて、ソラ君が『ギブギブ』と小さな声でタップしていた。
さっきの怖いソラ君は、先輩のおかげでいなくなっていたけれど、何だが悲しい。
あの表情のソラ君は、――心の奥に隠れちゃったんだから。
それに、やっぱソラ君にも奈菜は美人で、そんな風に見えているんだなって思うと胸がズキズキした。
私は奈菜みたいに美人でも背も高くもないしね。
「あ」
ってか、奈菜がサッカー部に気になる人が居るってもしかして!?!?!?!?!
「すいません、戻ります」
「あゆ」
「雨笠、すまないが奈菜には黙っててくれ」
「分かりました」
一瞬、ソラ君にも名前を呼ばれた気がしたけれど、先輩の必死な声で掻き消させれた。
パンを持ち運びながら――渡り廊下の向こうで岳くんがこちらを見ていたのを私は見逃していた。