世界で一番ソラに恋した。



次の時間は、恋の短歌の和訳だのを先生がただただひたすら読み上げていくだけ。

和訳プリントを、授業の終わりに配ってくれるし特にノートの必要もない。

時々、蘊蓄を言ったり、時代背景での身分とか儀式とかの説明だけで――眠ったり携帯を弄ったり――違う事をする人がちらほら居る息抜きみたいな授業だった。

そんな中、ソラ君は教科書も開かずに、ただただひたすら――空ばかり見ていた。

今日は、太陽の光が強くて――真っ白な光で青い空が消えてしまう様な明るい日で。

それなのに、ソラ君は、きっと目を細めることもなく見ているんだと思う。



私の心は、空みたいに広くないし、慎重の小さい分、きっとそのコンプレックスのせいで心も狭いと思う。
だから、大きな空に叫ぶんだ、『伸びろ』って。

奈菜も、岳君も、サッカー部の部長さんも。

言いたいことを全部、相手に伝えられるわけじゃない。
それはタイミングで、それは勇気で、それは心使いで、

いろんな理由の中、飲み込んでしまう言葉がある。
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