世界で一番ソラに恋した。
「放課後が苦痛だったのに、今はあゆのおかげで楽しいんだ」
「うん、私も楽しいから、ほら、離してってばー」
「何でだろうね。俺、此処から出て学校から家に帰らなくちゃなのに、帰りたくなくてさ。――あゆの元へ帰りたくなるんだよな」
屈託のない笑顔でそう言われてしまえば、私の顔は沸騰するしかなかった。
「此処が俺の帰る場所なら幸せなのに」
離したくないと、私の手に縋るソラ君は、何だか子供みたいに弱々しくて。
助けてって言えない代わりに、温もりを探しているような、儚さがある。
知りたいよ、貴方を。
でも、貴方の口からしか聞きたくないよ。
そんな気持ちがせめぎ合う。
結局、風でノートがパラパラとめくれるのなんて構わずに、私たちはお互いの手を見つめて見つめ合い、――静かに笑った。