世界で一番ソラに恋した。


「ソラ君」

「うん」

「今から奈菜のアルバイト先へ行かない?」

「アルバイト先?」

帰りたくないなって、夕焼け色になりつつある空を眺めていたら、思いついた。

「うん。ポイント溜まってるから、ナンお代わりし放題だよん」
「ナン? ってことはカレー屋?」

「そう。インド人のマスターが面白いから行こう行こう」

「そうだな。腹減ったし。ナン食べ放題とか、俺の胃袋舐めんなよ」

嬉しそうにカバンに荷物を纏めるソラ君に思わず、ほっと胸を撫で下ろす。

いつも、そろそろ帰ろうという時間になると、ソラ君は笑顔がヘタクソになるから。

「でもうちの高校、基本的にバイト禁止だから内緒にしててね」
「ああ。勿論。いつか部長も連れてってやろう」

にやりと笑うソラ君は、運動場を見下ろした。

遠くのゴール手前で、サッカー部が部活をしているのを感慨深げ二――他人の様に見ていた。

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