世界で一番ソラに恋した。



ソラ君と一緒に自転車で帰って、坂に差しかかったら降りて二人でとぼとぼと歩いた。

すっかり空には月が浮かんでいる。

奈菜は反対方向だし、バイトの後はさっさと疲れて眠ってしまうから、ソラ君と二人っきりになってしまうのは仕方ないけれど。


「来週のテストが終わってカラオケして夏休みに入って――あゆと花火大会。めっちゃ楽しみ」
「あはは。そっか。夏休みだもんね。でも夏休みの半分は――補講と言う名の勉強だよね」

三学期には、文系、理系、そして国立、私立の希望が聞かれクラスが分けられる。

ソラ君は――どうするんだろう。

来年は――こうして一緒に帰ったりできるのかな。

「やべ、姉ちゃんが男といる!」

そんなぽっかりと浮かぶ月を眺めながら切なくなっていた私の後ろから、弟の声がした。


「灰人!」

「げ、姉ちゃんが男と居る、彼氏? うわあ、彼氏?」
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