恋の心理学を実践しましょう?
そして現在の講義は『実践的な会話編』だ。
「まずは、相手に異性として意識してもらうことから始めなくちゃね。今のままだと睦美ちゃんは大瀬さんにとって、『ただの仕事上のパートナー』。プライベートでの接点はない、よね?」
「……はい」
柏葉さんに言われると胸にずしりと来るなあ。
柏葉さんにとって、私はただの生徒。プライベートでの接点はない。端からデートっぽく見えても、これは講義だから。
「睦美ちゃんの職場って、プラベートな話がしづらい雰囲気だっけ。二人で営業に出るときは? 外でなら雑談もするんでしょう?」
「まあ……軽くは。天気の話とか、ニュースの話題とか」
客先からの帰り道は、持ち帰った案件に関しての話しかしてないし。
「えー、何それ。超他人行儀~。休日何してるの? とか、恋人いるの? とかって話もしないの?」
「……しないですね。そういうプライベートなことを聞くの、タブーな雰囲気なんで。うちの会社」
休日に何をしているのか、恋人はいるのか、なんて質問を不快に思う人もいるだろうし。下手したらセクハラ扱いになるからか、男性社員は特に言わない。
「じゃあさ、今度聞こうよ。大瀬さんと二人きりのとき。彼女いるんですかっていう質問はいきなりしづらいだろうから、お店の話。一、営業先の付近で、カップルで行くのにいい感じのお店をリサーチしておく。二、そのお店の話題を出す。ここ、カップルに超人気らしいですよ~、大瀬さんも彼女と行ってみてくださいって感じで」
柏葉さん曰く、『相手に恋人がいる前提で』話すと探りやすいとのこと。
「彼女いるんですか? って唐突に聞くより、聞きやすいでしょ。彼女と行ったらどうですかって言われて、いなかったらいないって普通答えるし」