空夢
「早く!!」
 
「へいへい…」
 
 
仁はしぶしぶ自転車をこぎ始めた。 
 
 
「陽架痢って結構遅刻ギリギリに行くよな…」
 
「そう?」
 
「うん。いっつも走って教室入って来るじゃん」
 
「うっ…………」
 
 
あたしと仁はクラスも一緒でしかも席も隣。 
家も近所だし………
 
すごい偶然……




「坂道だ!」
 
少し行くと急な坂がある。 
 
「落ちるなよ?」
 
仁は意地悪っぽく聞く。  
「落ちないよバカ!」
 


とはいったもの、 
本当にこの坂道は急すぎる。 
 
 
あたしは落ちないように仁の腰に手をまわした。 
 
 



坂道を過ぎると学校の校門が見えてきた。 
 
 
「遅刻じゃありません!」 
満足そうに笑う仁の顔は意外に可愛く見えた。 
 
 
「二人乗りはヤバイからおりよーぜ?」
 
「あっうん!ありがとう仁!」
 
「いえいえ」
 

自転車置き場まで、仁と並んで喋った。 
 
 


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