嫉妬深い狼と同棲生活?!
「おめでと。」
「…!」
はは。
何言ってんねん俺。
心の中で
あぁ言った自分を嘲笑う。
…ユカリから告げられた時の俺は
やけに冷静だった。
そりゃあな
分かってたことやもん。
だからあんなことも言えたんやな。
(…本当は)
1ミリだって
お祝いの気持ちなんて無い。
むしろ
早く別れてしまえって
人の不幸を願う最低の考えまで浮かんでいた。
なぁ、何で?
何で俺…こんな…。
自分が惨めやった。
素直になれず
気持ち隠して他の子と付き合って
それでも目ではあいつのこと追いかけ続けて
斎藤にもバレバレで
思いもよらず同じクラスなって
最初に知り合って仲良くなって
親友にまでなって
なのに気持ちは伝えられんし
友達以上に思われることもなかったし
何やねん「おめでと」って
(ホンマは俺が彼氏になりたかったって
泣きたいほど悔しいくせに…!!)
俺が1年の時に勇気出して名前聞いてたら?
1年の時にすでに仲良くなってたら?
俺が素直に
一目惚れやって
あの人に会うまでに伝えられてたら…?
そんなことを思いながら
その日から毎日、無心やった。
自分がホンマに楽しくて笑っているのか
わからんくなった。
思うに
自暴自棄になってというか
無理に繕って
空元気っていうんかな
ロボットみたいに
心は死んでたんやろな。
毎日幸せそうなユカリを見て
傷ついてる自分の心にさえ
もう目を向けなくなっていた。
俺を救えるのは
俺しかいないのに。
「…ハタ、いい加減もうそれやめろよ。」
「ん?何のことや?」
「…その"元気"のことだよ。」
(-------!)
修学旅行の部屋で
斎藤にそう言われた。
斎藤は親友やからな
俺のことよく分かってるなぁ。
…何でもお見通しやねん。
本当はユカリの顔見るだけで辛い。
声を聞く度に
好きな気持ちが刺激されるのが、痛い。
だけど俺が
「…変な顔してしまったら
ユカリまた傷つくやろ。」
俺が告白して
フられてたならまだしも
俺が勝手に
失恋しただけやもん…。
「…それでいいのか?」
「…おう。それでええねん。」
そうは言ったけど
本当は…言いたかった。
今日行った美ら海水族館の
アクアルームで
俺ら一緒に座って眺めてたけど
あのジンクス
『アクアルームで好きな人と一緒に座って魚眺めると
その2人は結ばれる』
なんやで?って。
そんで続けてあそこで本音でも暴露してしまおうかと思ったけど
…言えんかった。
たとえあそこで小林が来ていなくても
言わんかったと思う。
そしたらだって
俺らの"友情"でさえも
無くなってしまうと思ったから。
「…俺ってホンマ、チキンやわ。」
「…でも」
それだけ一途な想いだからなんじゃねぇの
って
斎藤が荷物を片しながら
静かに言った。
「…っはは!」
おっしゃる通りですわきっと
そう言って斎藤に向かって
笑顔を向けた。