マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
第4楽章、ホルンの美しいソロが始まる。
この部分には歌詞が付いていて、クララ・シューマン(人妻!)への思いが込められている。
何となく僕も奏ちゃんの事が、頭をよぎった。


そのソロと同じテーマをフルートが再び奏で、
トロンボーンから再びホルンへ。


僕はそれを左手で合図して消す。手品師がトランプを消すように。

沈黙の様な短い休符。
これも音楽だと言う思いを込める。


その後、弦楽器の波が押し寄せる。
あの有名な部分だ。
のっぺりとした感じにはしたくない。フレーズを持たせる。


そのうち平原綾香が、この部分に歌詞を付けて歌いそうだな。


…あ。まただ。
忘れていた感覚がよみがえる。
リハーサル初日に感じたあの心地よいふわふわした感覚。
立っていられない位の高揚感。このオーケストラとは、相性が良いんじゃないかと思ったあの
感じ。
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