マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
序奏に出てきたコラール風のファンファーレが
他の楽器も加えて、再び華やかに登場する。
暗闇を切り裂き、光が満ち足りた世界が現れる
眩しくて、キラキラしている。


あー。こんなところまで来てしまった。
もう、終わってしまう。
終わりたくないな。
…こんなに楽しいのに。






僕は、指揮者には向いて無いのかも知れない。
でもやっぱり、音楽が、指揮者の仕事が、好きなんだ。






ポタリと譜面台に汗が落ちた。
はっと気付くと、既に拍手に包まれていた。
いつの間にか曲は終わっていたのだ。

…はは。なんだこりゃ。


自嘲染みた笑いがもれる。
コンマスさんと握手をするが、どう取っただろうか。
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