マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
シモーヌさんのアパルトマンを出てホテルへと向かう。


はーっ。
酔って火照った頬を夜の風が撫でていく。
気持ちいい。


「奏ちゃん。足元気をつけてよ。」

「ハイハイ。わかってます。マエストロ。」

「ゆ・う・へ・い!」

またか!もーいい気持ちだったのに。

「ハイハイ。悠平さん。」

「え…。」


私があっさり名前で呼んだからか、マエストロは動揺したようだ。

よし。静かになったな。


するとすぐ隣を歩いていたマエストロが、立ち止まって腕時計を見る。

「…良かった。まだ日付変わってない。」


そう言ってチェスターコートのポケットに手を
突っ込んだ。


私の前に恭しくラッピングされた小さな箱の様なものを差し出す。


「…お誕生日おめでと。」

…あ!
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