マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
6 恋は愚かというけれど
「……どこが良かったんでしょう? 私と契約し
たいだなんて。」(仏)


リヨン放送フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者就任会見は、地元紙、テレビ局など注目の高さを示していた。


「君はよっぽど前回の公演、散々なものだっ
たと思っているようだ。」(仏)


クスクスと笑いながら、音楽監督のマルセル・ド・フレール氏はソファに深く座り込み、肘を凭れた姿勢でこちらを見ている。

……優雅だ。
膝の上にシャム猫を乗せ、ワイングラスをくるくる回してほしい。


「公演自体は…、まあ、色々問題はあったにせ
よ私自身、楽しく出来たとは思っています。
けど……。」(仏)

「けど?」(仏)

「そこに至るまでの過程が余りにも酷すぎま
した。」(仏)

「リハーサルでの事は、コンサートマスター
のリオネル・ボナリーから聞いたよ。」(仏)

「こ存じでしたか…。」(仏)

何だかバツが悪いのと、じゃ尚更何故?という
疑問が浮かんでくる。
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