マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
そうは言ってくれたが、けっして救われるものではない。

ライブラリアンの人とは、弦楽器のボーイング(弓の動き方を示す記号)を決め、その他の重要な解釈を書き込んでもらう為に、事前にやり取りをしていた。

どちらにしろ、コミュニケーションが不足してたのだ。
メールと電話でしかライブラリアンとはやり取り出来なかった。


「他の楽団員にも意見を聞いてみたが、概ね
賛成の意見だったそうだ。勿論反対する楽団
員もいた。それは当然だ。」(仏)

僕は無言で相槌を打つ。

「意見としては、指揮者としては頼りない、
もっとワンマンでいい、楽団員の機嫌をとろ
うしているのが透けて見えるとかね。」(仏)

フレール氏の笑みが不敵なものになる。

…おおお。
思い当たる節があるだけに、グサグサくる。


「それでも、賛成の意見が多かったのは一つ
一つの楽器をちゃんと理解していて、その上
での指摘や提案がしっかりしていた事、良い
ものを作り上げようと、ギリギリまで諦めな
い 姿勢だったり、そういうところが評価をう
けたらしい。」(仏)


「……。」


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