マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
自分の顔はかなり呆けていることだろう。
嬉しい。
かなり、嬉しい。


「君は、自身の情熱を楽団員に認めさせる事
が出来たんだ。」(仏)

「…はい。」(仏)

「胸を張って良い。」(仏)

「はい。」(仏)

「また仕事がしたいと思ってもらえるなんて
指揮者冥利に尽きると思わないかい?」(仏)


……嘘みたいだな。
リハーサルの段階では、指揮者なんて辞めてしまいたいなんて言ってたのに。


「実は、私が君を初めて知ったのは、ベルギ
ーの音楽祭でのデビューなんだ。」(仏)

「えっ?」(仏)

いきなりでビックリした。

確かにその音楽祭では、コンクール優勝者として出演させてもらったけれど。
昔の事なのに、よくご存じだな。


「バルザス国際コンクール優勝者の日本人と
聞いてて、どんな若者かと。
たまたまだったんだけれどね。」(仏)
< 174 / 288 >

この作品をシェア

pagetop