マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「ハハ。すまない。勿論見た目だけが印象に
残ってる訳じゃないよ。」(仏)

「…ハハ。」

ほんまやろか。

「小品を幾つか演奏してたね。
亡き王女のためのパヴァーヌとか、カヴァレ
リアルスティカーナとか。」(仏)

「はい。」(仏)

ホント良く覚えてらっしゃるな。

「私が特に良いと思ったのが、オッフェンバ
ックの船歌だよ。」(仏)

「…そうでしたか。有り難うございます。」
(仏)

4分位の作品だ。
あの曲が?ふうん。


「実は私も学生の頃、あの曲を指揮してね。
途中でタイミングを間違えて曲がストップ。
大失敗をしたんだ。」(仏)

「え?そんなことが?」(仏)

フレール氏でもそんな事あったんだ。

「その時の落ち込み方は酷かったと思うよ。
自分の将来の夢の選択はやっぱり、無謀だっ
たのか、なんて思ったり。」(仏)

ああ。
やっぱりそう思うものなんだ。
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