マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
たくさんの種類の楽器はとても色彩豊かだし、
自分が弾いてるピアノではこんなことは出来ない。


それから何度となく、この曲をかけてくれとせがむようになった。


ある日この曲を聴いていて、いつもと少しだけ違う気がした。
この前聴いた時よりも、細かくて小さな音もあ
る程度はっきりと聞こえる。


分かりやすいのは、テンポがこの前よりゆっくりしている。


「陽子せんせ、このCDいかれてる。」

「え?いかれてる?何ともないよ。」

「だって速さこの前とちゃうし、音とかもな
んかちゃう。」

「すごいやん悠くん。そんなん分かんの?」


陽子先生はCDを2枚持ってきた。


「この前聴いたんがこっちで、今聴いたんが
こっち。おんなし曲やけどな、演奏してるひ
ともちゃうし、指揮者さんもちゃうねん。」

「しきしゃさん?」


「この棒持ってはるひと。この人だけお客さ
んに背中向けとるし、演奏もせえへんの。」
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