マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
梁瀬さんと初めて会った日、大変だから、と叔父さんが紹介していた事が、改めて思い出される。


フットワークの軽い叔父さんは、ちょっと顔を出したかっただけだから、と店を後にした。
おそらくこの後は、会合に出るとか取引先と会ったりするのだろう。


「主役なのにあんま目立ってないね。」


グラスに半分ほど残っているビールに継ぎ足してくれたのは、上司の中野さんだった。


中野さんは二年先輩にあたるが、広告代理店だったか、イベントを企画する会社だったか、そういう会社からの転職組だ。
三十代にはいま少し、といった位だろう。


有難うございます、とグラスを傾ける。


「でも悪くないだろ?歓迎会っていうより
それぞれ食べたいもの食べて、自由に話す」


「そうですね。」


会社の雰囲気は、社員がさほど多い訳ではない事もあって、ユルい。
アットホームだと言えばそうなのだが。
< 50 / 288 >

この作品をシェア

pagetop