マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「大学生にょ(の)頃って、指揮きゃ(か)じゃ
なかったの?」(たどたどしい仏語)


「指揮科は留学していた時の話よ。」(完璧な仏語)

ちっ。ますますワインが美味しくなくなる話だ


てっきり音大は指揮科だと思っていた。しかも
子供の頃にも賞を取ってるって…。


マエストロのピアノ歴が結構本格的だった事に
またも愕然となる。


この人の存在はどれだけ私を追い詰めるのか。
自分が醜い人間に成り下がっていくのが、手に取る様に分かる。


この上バイオリンや尺八まで吹けるなんて話になったら、どうしてくれよう。マエストロの首を絞めてしまいそうだ。


「で、その事を覚えてた音楽監督が、『ユー
ヘイがピアノをすればいい。弾き振りをやっ
てみたらどうだ?』って。」(仏)

「音楽監督が…」(仏)

そうだろうな一番権限が有るだろう。


「最初はとんでもない、やったことない、無
理だ、の拒否一点張りで。」(仏)

マエストロの慌てっぷりが、目に浮かぶ。


< 9 / 288 >

この作品をシェア

pagetop