疑似恋愛
3節
ふと気が付くと、部屋の中で紅茶を飲んでいた。そうしているのは自分のはずなのに、どこか不自然。 他人の視点から自分を見ている感じ。
…ああ、そうか。夢だからだ。
私の目の前には、件の老婆が座っていた。
老婆は、何も話さず、ただ穏やかに微笑んでいる。とても幸せそう。
「…どう?この紅茶。新茶葉で入れたものなんだよ。」
「うん、とても美味しい。心が洗われるようだわ。」
「そう、良かった。」
何故だか、私達は親しげに話している。私はこの老婆を知らないのに。
「相変わらずあさかの淹れた紅茶は美味しいわね。」
老婆が話す。
「…ていうか、それ以外出来ないのよね、貴方は。料理なんてからっきしだし。」
「まあ、失礼しちゃうわ。」
私が怒ったように頬を膨らます。この光景、どこかで…。
「最近はちゃんと卵を割れるようになったんだよ!」
「いや、そのレベルかい。」
老婆、ツッコミキレキレですな…。声も若々しいし。
「あーあ、何でそんなんなのにモテるのかねえ、あさかは。」
「モテてなんてないよ。」
「またまたぁ。頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗。そう言われてるの知ってる癖に。」
「…。」
あ、思い出した。これ…『 』と私の、昔の会話。高校生の時の会話だ。…あれ、誰とだっけ…。名前が、出てこない。
ふと、老婆がこちらを見た気がした。私の心臓がドク、と大きな音を立てた。見えていない…というか、私はこの老婆の目の前にいるはずなのに。『ユーリ』の意識の方を、捉えられた気がする。
「そりゃあ、彼氏くんもやきもきしちゃうわ。うちの学校で、あさかを知らない人なんていないもの。」
「…私は、注目されたくなんてないのに。放っておいて欲しい…。」
「それは無理でしょ。良い意味でも悪い意味でも、ね。」
老婆が不意に立ち上がって、こちらへ向かってきた。私は反射的に足を後ろへ引こうとしたけど、出来ない。動かない。
「…!」
「…あさか。こんなことになってしまうなんて、私には思いつかなかったの。ただ、貴方に幸せになって欲しかっただけなんだよ。」
「…」
口を開いたけれど、声は出なかった。
「ごめんね、ごめんなさい。」
この人は、何を謝っているのだろう。
この人は、誰?
…ああ、そうか。夢だからだ。
私の目の前には、件の老婆が座っていた。
老婆は、何も話さず、ただ穏やかに微笑んでいる。とても幸せそう。
「…どう?この紅茶。新茶葉で入れたものなんだよ。」
「うん、とても美味しい。心が洗われるようだわ。」
「そう、良かった。」
何故だか、私達は親しげに話している。私はこの老婆を知らないのに。
「相変わらずあさかの淹れた紅茶は美味しいわね。」
老婆が話す。
「…ていうか、それ以外出来ないのよね、貴方は。料理なんてからっきしだし。」
「まあ、失礼しちゃうわ。」
私が怒ったように頬を膨らます。この光景、どこかで…。
「最近はちゃんと卵を割れるようになったんだよ!」
「いや、そのレベルかい。」
老婆、ツッコミキレキレですな…。声も若々しいし。
「あーあ、何でそんなんなのにモテるのかねえ、あさかは。」
「モテてなんてないよ。」
「またまたぁ。頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗。そう言われてるの知ってる癖に。」
「…。」
あ、思い出した。これ…『 』と私の、昔の会話。高校生の時の会話だ。…あれ、誰とだっけ…。名前が、出てこない。
ふと、老婆がこちらを見た気がした。私の心臓がドク、と大きな音を立てた。見えていない…というか、私はこの老婆の目の前にいるはずなのに。『ユーリ』の意識の方を、捉えられた気がする。
「そりゃあ、彼氏くんもやきもきしちゃうわ。うちの学校で、あさかを知らない人なんていないもの。」
「…私は、注目されたくなんてないのに。放っておいて欲しい…。」
「それは無理でしょ。良い意味でも悪い意味でも、ね。」
老婆が不意に立ち上がって、こちらへ向かってきた。私は反射的に足を後ろへ引こうとしたけど、出来ない。動かない。
「…!」
「…あさか。こんなことになってしまうなんて、私には思いつかなかったの。ただ、貴方に幸せになって欲しかっただけなんだよ。」
「…」
口を開いたけれど、声は出なかった。
「ごめんね、ごめんなさい。」
この人は、何を謝っているのだろう。
この人は、誰?