元通りになんてできない

「誰にでも話せないけど、誰かに聞いて貰いたかったんです。
誰にも言わず、ずっと黙っているというのは辛いですから。今はずっと…、騙してますからね、会社の人も。
あんなにお祝いして頂いたのに、結婚して無いなんて…。
こんな内情なら、頂いたお祝い金も返さないとおかしいです」

「…そんな事は別に気にしないでいいと思う。返した方がいいって気持ち、私も解る。
でも…、普通に結婚しても、離婚は早い遅いに関わらず、無い事じゃないもの。
でも幸元君…、あんなに悩んで…、悩んだ結果、結婚したのに…」

「…悩んだのは…、俺の事情ですから…、こうなる事なんて解りませんでしたし…。……。
少し食べましょう?食欲が無いなら、尚更、食べてください。
帰っても、食べないつもりなら、体に悪い」

「えっ…」

「…ずっと元気ないじゃないですか。…ずっと。
俺に話してみませんか?
噂話もしないし、口は堅いですよ?信用出来ませんか?」

俺はサンドイッチを摘み、鷹山さんが話してくれるのを待った。

「ミックスサンドだから、色々ありますよ?トマトとチーズの、旨いですよ?
アルコールにも合いそうな味だな〜」

「……」


「すみません」

どうやら、俺には無理なようだ。
俺は店員さんを呼び、サンドイッチを持ち帰り用に包んで欲しいと頼んだ。
それを鷹山さんに渡した。

「帰りましょう。遅くなる。
今日は突然すみませんでした。俺の話、聞いて貰って有難うございました。
気をつけて帰ってくださいね。
知里ちゃん、早く迎えに行ってあげてください、遅くなるから。じゃあ」

俺は会計を済ませ、先に店を出た。
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