元通りになんてできない


【今から迎えに行きます。ちょっと買い物に出掛けるような格好で待っててください。
30分後に着きます。幸元】

メールが来た…。



「幸元君?車って…」

「はい、買い物もですけど、少しドライブしませんか?嫌いですか?」

「嫌いじゃない、むしろ好き」

だけど…。

「良かった。じゃあ行きましょう」

幸元君は助手席のドアを開けた。

「さあ、乗ってください」

エスコートしてくれた。
普段見ない一面を見た気がした。

「シートベルト、OKですか?」

「はい、OKよ」

「じゃあ、行きましょう。あ、鷹山さん、今日は休日だから、俺のことは猛と呼んでください。
俺も薫さんと呼びます。いいですよね?」

「どうせ、決定事項って言うんでしょ?」

「おー、解ってますね。じゃあ、薫さん、1時間程のドライブです」

「時間限定なの?」

「はい、距離でそのくらいだと…」

「距離?幸元君…、何処に行くつもりなの?」

「俺の実家です」

しまった…。
いきなりハンドルに手を掛けたかと思うと、急ハンドルを切り、サイドブレーキをかけられた。
ブレーキ音と共に反転した。

「あっぶ、危ないじゃないですか!薫さん」

「大丈夫よ。ちゃんとUターンして停まってるでしょ?危ないのはどっち?実家ってどういうこと?」

(※因みに厳密に言うと、これだけでは上手くいきません)


路肩に寄せた。

「どういう事か説明してもらっていい?」

「はぁぁ、俺とした事が…、嬉しさのあまり、口走ってしまった…」

「何?」

…。
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