元通りになんてできない
「取り敢えず、出掛けましょう?いいですよね?」
「え?…ええ…」
正式な相手でもないのに、泊まる事にまでなるなんて。反論するとかとは関係なく、丸め込まれてしまいそう。…本当にいきなり来たのよね?何かお膳立てをしてた訳じゃないのよね?
「じゃ、父さん、母さん、ちょっと出てくる」
「ああ、行ってこい」
「行ってらっしゃい」
「…いい御両親ね。私の親は両親とも、もう他界してるから…羨ましいわ」
薫さんは本当に一人っきりで頑張っていたんだ。
知らなかった事を知り、俺は益々、薫さんを守りたいと思った。
「一日に何回も言っちゃ駄目なんですかね…」
「え」
「俺と結婚してください」
「…それは。…確かに猛君の御両親は、私の事よく思ってくれたみたいで有り難かったけど…でも…」
「俺と結婚してください」
「猛君…」
「俺と結婚してください」
「…」
「何度でも言います。貴女がうんと言ってくれるまで。俺と結婚してください」
…。
「…取り敢えず、買い物に行きましょう?」
「…」
俺は車を出した。