元通りになんてできない


「取り敢えず、出掛けましょう?いいですよね?」

「え?…ええ…」

正式な相手でもないのに、泊まる事にまでなるなんて。反論するとかとは関係なく、丸め込まれてしまいそう。…本当にいきなり来たのよね?何かお膳立てをしてた訳じゃないのよね?

「じゃ、父さん、母さん、ちょっと出てくる」

「ああ、行ってこい」

「行ってらっしゃい」



「…いい御両親ね。私の親は両親とも、もう他界してるから…羨ましいわ」

薫さんは本当に一人っきりで頑張っていたんだ。
知らなかった事を知り、俺は益々、薫さんを守りたいと思った。

「一日に何回も言っちゃ駄目なんですかね…」

「え」

「俺と結婚してください」

「…それは。…確かに猛君の御両親は、私の事よく思ってくれたみたいで有り難かったけど…でも…」

「俺と結婚してください」

「猛君…」

「俺と結婚してください」

「…」

「何度でも言います。貴女がうんと言ってくれるまで。俺と結婚してください」

…。

「…取り敢えず、買い物に行きましょう?」

「…」

俺は車を出した。
< 116 / 191 >

この作品をシェア

pagetop