元通りになんてできない
大人≦子供
ショッピングモールに来た。
薫さんが必要な物を買い揃える間、俺は少し離れた場所に居た。
彼女の買い物は早かった。
決まった物を買うのだって、時間の掛かる人も居るというのに…。
きっと、ゆっくり自分に使う時間は無かったんだよな…。
中央の椅子に座っていた俺に、気がついた薫さんは小走りでやって来た。
「待たせてごめんね」
「いや、全然です。早いくらいですよ」
「そう?それより、シャツ、一緒に見てみない?」
「俺の?」
「そう、俺の」
ショップに入ってみた。
「どんなのがいい?」
「ん〜これと言って特に…」
遠くから様子を窺っていた店員がにこにこと近づいて来た。
「彼氏さんのをお探しですか?」
「…」
「…」
「…ああ、はい、俺のです」
「こういったのどうですか?色白な方ですから、凄くこの色、お似合いですよ?」
「ああ、そうですね。あの、勝手に見させてもらっていいですか?」
「はい、ではごゆっくりどうぞ。お決まりでしたら声を掛けてください」
「どうも…」