元通りになんてできない
「会社からお祝い金はあると思うけど、何か、あったらいいなと思うモノとか、欲しいモノは無い?高いのは無理だけど」
給湯室に引っ張って来ながら聞いた。
「さあ、よく解んないです。そういう事、俺には」
「そうか、家の事は奥さんだもんね」
「…まあそんなとこですかね。でも特には」
「ですかねって…、もしかして、奥さんに押され気味でしょ?
夫婦のルールはそれぞれ違うから、自分達に合ったやり方が一番なんだけど。余所と比較し過ぎたら駄目よ?みんなそれぞれ円満な理由は違うから。
どちらかが我慢ばかりするのも駄目よ?気付いてもらえなかったら、ツラいモノよ?
奥さんは専業主婦になるの?
だったら家にいる時間が一番長くなる訳だから、快適に過ごせるようにしたいと思うはず。
なんにせよ、お互い思いやらないとね?あ、余計な事一杯言っちゃった、ごめんね。
式は北海道でしょ?綺麗でしょうね…」
「…そうですね、まあ、パンフレット通りなら、教会へのアプローチはラベンダーが咲き誇っているようですよ」
「そう…、ラベンダーね…。私達のね、新婚旅行、北海道だったの。
それがね…、ラベンダーにはまだ少し早くてね…、まだ蕾だったけど。
美瑛町とか網走とか道東の方に行ったの。ジャガイモ畑とか、とにかく広大で。永遠畑なんじゃないかと思ったくらい。走っても走っても景色が中々変わらないし。
あ、ジャガイモの花は咲いてたよ。フフフ。一面が白と緑の絨毯みたいな状態…。それとね、キタキツネに会えたのよ〜。流石にルールルルーとは呼ばなかったけどね。警戒しながらでも寄って来るの。
餌とかあげちゃいけないでしょ?でも、何だか慣れてる感じだったから、やっぱり誰かが与えているのよね、きっと」