元通りになんてできない
「いつ使っても良いように掃除してあるから、あなた達、今夜はここ使いなさい」
布団を抱えたお母さんが急に現れた。
「ベッドもあるし、大丈夫よね」
「え、あの…」
いくらなんでも…。なんとも返事に困る事をさらっと言われた。率先して猛君に協力的なのは解るけど。
「お父さんがそろそろお風呂から出るから、猛、使いなさい。出たら薫さんに入ってもらって。
じゃあ、私は、おやすみなさい」
「あ、有難うございます。おやすみなさい」
「取り敢えず、布団は敷いときましょうか?」
「あ、私がするから。猛君はお風呂、準備したら?お父さん、もう出る頃だって言ってたし」
「じゃあ…、風呂行ってきます」
「あ、はい」
パタン。
…はぁ、どうしよう、…どうしよう。なんでもない振りで返事はしたけど。幸元君はどう思ってるのよ。
ここで?一緒に?いくら何でも…。困る。せめて別の部屋に…。
一緒の部屋で寝るのは、…考えただけで眠れない…。どうしよう。
着替えを用意して、猛君が帰ってくるのを待っていた。
あ、待って、お風呂に入ったら、化粧落としてスッピンになるじゃない…もう。
いきなり…、こんな目に合うとは。
かと言って落とさずに寝るのはちょっと…ね。
「薫さん?」
「キャッ」
「あ、ごめん、驚かしたみたいですね。お風呂どうぞ?
抵抗があるといけないから、今、お湯を抜いて新しいの入れてます。タオルは入ったら、棚にあるから解ると思います」
「…猛君。お願いがあるの。……電気消して?」
「え…ぇえっ!」