元通りになんてできない
猛君の実家から帰った私達は、真面目な話をしていた。
「俺、狸オヤジに入籍してなかった事、話します。ちゃんとしておかないと、俺達の様子を勘ぐって、良くない事してると思われたら、薫さんが何言われるか解らないし」
「私も話さないといけない…、これ以上先延ばししたら、機を逃してしまう」
「じゃあ、一緒に話しますか?」
「ううん、それは、また、幸元君と私それぞれの問題だから…気の早い誤解をされたら困るから、別々の方がいいと思う。
…私、場合によったら辞めてもいいと思っているの。
働きやすい環境で有り難いと思っているけど、気不味い思いをしてまで仕事するとなったら…。
…話してみないと解らない事だけど」
「では、別で」
「うん」
「部長…」
「どうした、幸元。順調か?」
「あ。…実は、その事でというか、自分の事で話がありまして…」
「ん、で、どうした」
俺は狸、いや、上司に話があると告げ、何かを察したのか部長に会議室に連れて来られていた。
「実は、結婚の事なんですけど…」
「どうした、もう離婚話でも出たか?」
当然、何も知らないだろうけど、汗の出るような返しに戸惑った。まあ、明るい表情でもなく、結婚の事だと言えば、いい話とは思わない、今から話す内容など容易に想像がつくか。
「あ、いや、……なんて言うか、お祝いして頂いておきながら、申し訳ない話なのですが…。
始めから結婚として成立して無かったというか、今となってはなんですが」
「何、どういう事だ?」
俺はマナミがしたかった事の経緯、その為にした事を話し、未入籍のままだった事など細かく説明した。