元通りになんてできない
「…鷹山さん、今まだ話せる時間ありますか?」
「え?大丈夫よ。まだ休憩時間あるし。どうしたの?なんだか…」
改まったりして。あまり、気が乗らないのかしら。…結婚話って、男の人はそんなにしたくないものかしら。
「…すいません。
結婚決めた人間が言うのもおかしいんですけど…、このまま結婚してもいいのかなと思い始めたら、妙な気になって来て…。確かに、結婚するって決めたのは決めたんですが。
元々、結婚に関心が無かったのもあるんですけど。親が結婚、結婚って煩くて…それで決めたようなところもあって…。
そんなん駄目ですよね?」
私は首を振った。
「例え親に言われたからと言っても、幸元君がそう決めて、どんな相手でも、ずっと自分を押さえていける自信があるなら、駄目とは言い切れないと思う。
だってね、古い話になるけど、昔々の結婚は、嫁ぐまで相手の顔さえ知らないままだったとか言うじゃない?何も知らなくて。
それを思えば、お付き合いしてる訳だし。
…でもね、我慢して何かを無理矢理押し込めてツライなら、しない方がいいと思う。…初めから上手くいかないって解ってる訳だから。
…お互いの為にね。あ、ごめん、でも、決まった話なのよね、そうよね、するんだった」
「…随分、歳が離れてる気持ちになるんですよ…。
二十歳だからまだ子供の部分はあるとは思いますけど、子供過ぎて…、考え方に責任が全く無いというか…。本当、子供なんですよ。
金銭的な事も家事にしても、取り上げて話す事、全部子供なんです。なんでも母親がしてくれると思ってるし。仕事は辞めるって言ってるんですけど。どうやら結婚したら、お義母さんにご飯を作ってもらおうと思ってるみたいで…。
でも、叱れないんですよね、本人が悪いと思ってないようだから。解って無い人間には言っても解らない…。ひょっとしたら、ご飯も炊けないのかも知れないです。
…俺、炊けるのに」
「今まで何か作ってもらった事は無いの?ほら、出来なくても頑張ったりするじゃない?」
首を振る。
「一度も。ご飯といえば、どこそこのお洒落なカフェが出来たから行きたいとか、デリバリーとか…。そんなんばっかりですから…」
「ん…、まあ…、人には得て不得手もあるから。少しずつやってるうちに身についてくると思うし。一気に上達は難しいでしょうから、そこは長い目で見てあげないとね」