元通りになんてできない
「お前の話を聞く限り、打ち明けなければ解らない話だ。顔に出さず、シラーッと嘘を突き通せるならな。新婚のうちはあれこれ聞きたがるから、適当に濁せるならな。自分達は事実婚だからと言い通せば済む事だ。
ま、それが真実ではないがな。
その嘘にずっと堪えられるならの話だよな。いい加減な奴なら、多分言わないな、言わなきゃ解らないから。
だが、幸元は俺に話しておかないといけない事情が出来たという事だよな?」
「はい、察しの通りです」
…鋭い。正直、そこまでは説明するつもりはなかった。
「…好きな女でも出来たか?」
あ。
「…はい」
「まあ、そうだよな。それ以外ない」
「…はい」
「いい女なんだろうなぁ…」
「え?」
「ん?お前にちゃんとさせようと言う気を興させるくらいだから。女、なんて言い方して悪いけど、自分を鼓舞したくなる存在の女に出会えた幸元が羨ましいよ…。ついでに話すけど。
薄々は解ってるだろうけど、俺の、うちの夫婦関係は終わったんだ。
どちらかが悪いと…、もうそんな次元の話じゃなかった。互いの存在が無だよ、無。
何をしていようと干渉もしなくなるんだ。
結婚当初は、飯、作れない事も可愛いうちだったよ。そのうち少しずつやってくれると思ってたんだがな…。
駄目だな…、何もしてくれない事が許せなくなると。何もかも…、嫌になった。何もかもだ。
はぁ…。本当の離婚は疲れるぞ?
悪い、俺が話聞いてもらう側になっちまったな。
幸元の好きになった女性は、弱音を吐ける相手なのか?」
「はい」
「そうか…、そうか。
よし、この話は今は俺のところで止めておく。時期を見て報告するから心配するな。
幸元。いいか、その女性、大事にしろよ?」
バシッと背中に気合いを入れられた。
「有難うございます」