元通りになんてできない


「私はその女性の変わりという事ですね?」

「そうとも言いきれない」

「?」

「…俺に出来る事は何でもする。辛くなった時は言ってほしい。
他の誰でも無い、俺なら役職を利用して何とか出来る。融通が利くという事だ。
いいか、必ず頼るんだぞ?ずるくてもいい、利用できるモノは利用しろという事だ」

「有難うございます、…心強いです」

事情を知ってるから相談し易かった。…仕事、簡単には辞められないから。

「あいつは、なんと言ってるんだ?」

「言わない訳にはいきませんが、まだ言ってません。これからです。
例え言わなかったとしても、他の事とは違います。否応なしにお腹は目立って来ますから」

「…そうだな。
鷹山…。いきなりなんだが…、その、…触っては駄目か?」

「え」

「お腹、触っては駄目かな?」

「あ、え?まだ触るほど出てないですよ?」

「それでもいいんだ…。命が居るんだと…、感じてみたい」

部長…。

「…。い…いいですよ。構いませんよ」

「…済まない、有難う。後でセクハラだとか言うなよ?」

「部長、…大丈夫です。許可しましたから」

部長は隣に席を移動して来て、私の下腹に遠慮気味に手をそっと当てた。
私はその手に自分の手を重ねていた。

「多分この辺りで一生懸命生きてます」

「あ、うん。母親とは…、女性とは尊いものだな…凄いな…」

「そうですね…、神秘的というか、不思議なものですね。ここでずっと育つって…」
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