元通りになんてできない
「…部長」
「安定期って言うんだっけ?5、6ヶ月くらいになるまでは、流産する可能性だってあるんだろ?」
「…部長。本当に…。よくご存知ですね」
「気持ち悪いくらい詳しいだろ?ま、それだけ子供を切望していたんだ、最初はな…」
「…なんでしょう…、世の中、上手くいかない事、あるんですね…。こんなに願ってる人がパパになれてないなんて」
「…ああ。だから幸元に言っとけ。いつでも俺がパパになるからなって、発破かけとけ。
…本気だからな。どんな状況でも必ず守ってみせる」
「あ、あの…部長、どうしてそこまで…、何故なんです?」
「…それを俺に言わせたいか?」
「…でも…あまりに無償なことを言うから。私にしてみたら、いきなり言われて…」
「鷹山…」
「…はい」
「困惑させているのは解ってるんだ。無い物ねだりのようなもの。惚れた弱みだ。他に理由なんか何もない。俺は鷹山薫が好きだ。前にも言った。冗談じゃないんだ。
…だがその好きな相手にはもう決まった奴が居る、ただそれだけの事だ。
はぁ…、もう血気盛んな若僧とは違うからな。俺は俺の納得のいく生き方をしたいだけだ。だから、ずっと勝手に思い続ける。
鷹山薫という女を俺の出来る範囲で守っていく。…勝手にな」
「部長…」
「迷惑だとか言うなよ?この純粋な気持ちを“狸オヤジ”から取り上げないでくれ。
邪魔はしないから。
ホットミルクでも飲むか?」
「もう…部長。では、ノンカフェインのカフェオレがいいです」
「アハハハ、そうか。じゃあ、そうしよう」