元通りになんてできない


「私の方こそ、ずるいんです。人を見て判断したんです。
おっしゃる通り…、以前は中々本当の事を話せませんでした。
仕事に係わる事だから、早く話さなければいけないと思っていたのに、話すとなると、どうしても人となりが気になりました。話せない人なんじゃないかとか…、すみません。
…ずるいんです。
幸元君が部長に話をした時の様子を聞いて…、よく人の事を見て解ってくれてる人なんだと思って…。
それで、話そうと思った時、丁度、部長から声を掛けられて…。そのタイミングを利用しました」

「狡くなんかないさ。人間、話し辛い事は躊躇する。
きっかけが無いと話せないものだ」

あっ、と思った。
内容は解らないとしても、私が何か話したがっている事、察して部長から声を掛けて来たのではないかと…。
考え過ぎかも知れないが…、人の上に立つ人は、そういう人なんじゃないかと思った。

「過剰評価するなよ?」

「え」

心を読まれたのかと思った。

「俺は出来た人間じゃない。自分に都合の良い人間だ…」
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