元通りになんてできない

ええ?…結婚前だから不安になったのかも。
…どっちかだと思うのよね。あまり好きではなくても、家事も得意で性格も良くて、やっていけそうなら穏やかに結婚を考えればいいだろうし。何も出来なくても好きだからいいんだって思えるならそれも、それで。

「解らなくなったのなら、今現在の彼女を見て、気持ちを育てて行ったら?
少なくとも、お付き合いはしてたんだから。さっきも言ったけど、会った事もない人と、いきなり結婚する訳じゃないんだから。
聞くけど、究極よ?
嫌いってことじゃないでしょ?」

「……。まあ、…解らないです」

あ、どうしよう。追い込んじゃったかな…。

「…ごめんね。なんだか追い込むような、変な質問しちゃって。ごめんね、考え過ぎないでね。
ほら、マリッジブルーていうのもあるって言うじゃない?」

「男もですか?」

「そうよ、男もあるって言うわよ?」

「…。やっぱそれとは違うと思います。鷹山さんはマリッジブルー、なりましたか?」

「私?私はならなかったけど…」

そんな言葉も浮かびもしなかった。

「……鷹山さん、娘さんは毎日お弁当ですか?」

「え?そうだけど?」

「…お願いがあります。弁当、食べてみたいです」

「うちの?急にどうしたの?うちのは子供向けのメニューだし、味付けも濃くないし、地味なお弁当よ?」

「…それが食べたいです」

「どうしたの?」

「…どうもしません」

どういう考えからなの?…お弁当の話はしたけど、うちは関係ないじゃない?

「はぁ…。アレルギーは?」

「え?」

「食物アレルギーと、それから好き嫌いは、ある?」

「どっちもありません。…え?」

「んん…、よし。じゃあ、明日一回だけよ?」

「あ、作ってもらえるんですか?はい、有難うごさいます」

「その変わり。年上のおばちゃんが結婚前の幸元君を、お弁当で誘惑してるとか、言われないように気をつけてよ?」

「大丈夫です。年上ですが、おばちゃんだと思った事は無いです」

「違う!問題はそこじゃないから。もう…。……?」
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