元通りになんてできない


「昨夜、急に連絡が来てな…。今日、用が無いなら、お願い出来ないかって、な」

「あの…、何かあったんでしょうか…」

部長は首を振った。

「此処に運んで来た時、勘違いされたままだっただろ?その…、俺の事、ご主人だとか呼んで。
俺は、誤解を解かれないまま鷹山の夫のままで。
幸元と入れ代わった時、誤解されてるから看護師が来たら解いた方がいいと言って帰ったのに…、幸元は何だか、言えなかったらしいんだ。
別にそれでも今日帰る時、チラッと言えばいいじゃないかと言ったんだが、…行って欲しいと言うんだ。
そんな理由ではないと思うが…。
…それ以外、別に何か訳があるなら、本人に聞いてくれ。俺は立ち入らないから」

「…は、あ」

「俺は、聞かれるまでもなく、これと言った用も無いし、迎えに来たという訳だ。
ま、用があっても鷹山を優先するけどな。
…てっきり伝わってる話だと思っていたんだが。
いいか?俺でも」

「…いいかだなんて…、とんでもない。すみません、有難うございます。お願いしてもいいですか」



「失礼しま〜す。鷹山さ〜ん。あ、ご主人お迎えですね」

あらいやだ。普段の感じも、また素敵!渋いわ〜。

「あ、あの」

「んんっ。解ってます、帰ってからの事、説明しておきますね?
退院しても無理はせず、家事も根を詰めてしないでくださいね。
家を空けてると、ついついお掃除とか、したくなりますから。
多少散らかっても、埃っぽくなっても、死ぬ訳じゃないですからね。ほっといてください。
基本、安静にですよ。
ご主人に甘えてください。ね」

今日はスーツでもなく、普段着で無造作なヘアスタイルの部長に、勘違いしたまま顔を向け頷いた。

「大丈夫です。寝かせて動かせませんから」

部長も答える。
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