元通りになんてできない


部長の車でアパート迄送ってもらった。
部長は私が部屋の鍵を開けるタイミングで話し掛けてきた。

「仕事に出て来ても無理はするな、いいな。
金曜しか休んでない訳だから、体調不良くらいにしかみんな思ってない。
大丈夫かとか、聞かれるかも知れないが、風邪だとか言って、今はまだ上手くかわしておけ。
俺も今は何も知らない、そうしておく。
身の回りの事、幸元にしてもらえ。無理するな。…じゃあ、明日、会社でな」

そう言って車に乗り込んだ。

「はい、有難うございました。気をつけて」

頭を下げると、車の窓、軽く手を上げるのが見えた。


ふぅ。此処で倒れたんだ…。なんだか、いい気はしない。

幸元君…。
帰って来たこと…メールしよう。
もしかしたら、部屋に居て待っててくれてるんじゃないかと思ったけど…。

【今、戻りました。鷹山】

相変わらず、業務連絡みたいなメールだと言われそう。でも…。

…言いたい事、何かあるなら、自分から言って来るのを待ってみよう…。

今日はどうしたの?なんて…、聞かない。
何かあるから来れなかったんだから…。

来たくなかったんだから。
< 162 / 191 >

この作品をシェア

pagetop