元通りになんてできない
「…付け込むつもりは無い。付け込むつもりは無いんだが…、寂しくないか?
一人で頑張ってる。よく頑張ってると思う。自分が望んだ事だとはいえ。
頑張ってるな、と声に出して言ってくれてるか?頑張ってるな、と抱きしめてくれてるか?
ん?どうだ?」
「それは…」
言葉にならない…。何だか自分の心がよく解らなくなって…、追い込まれた気持ちになる。
「幸元君は…」
「鷹山…」
部長は立ち上がり、側に来ると、しゃがんで私を抱きしめた。
あ…。私の思考は益々ついていけてない…。
ゆっくり立ち上がらせながら、しっかりと強く抱きしめられた。
「はぁ…鷹山薫。確かに鷹山薫は母親だが、俺には、女なんだ…」
胸がキューッと締め付けられた。何?…魔法の言葉?…。
ドクドクドク…煩い。
強く抱えられるような抱き方に身体の力が抜けそうになる。
部長はくっついている首筋、耳元で囁いた。
「頑張るな…、頑張り過ぎるな、肩肘を張るな。…肩の力を抜いていいんだ。
もう、頑張るな…一人で頑張らせない、約束だ」
部長…。
「考えられないか?俺の事は嫌いか?」
…ずるい。嫌いかと聞かれたら、…嫌いじゃないと答えてしまう。