元通りになんてできない


「…鷹山。…タヌキの戯言だ」

部長は更に強く抱きしめながら呟いた。この強さが更に切ない…。

「このまま離したくないと思ってる。鷹山…、近づけば近づくほど、触れれば触れる程、欲がでる。止められなくなる。
それはオヤジでも変わらない。…男なんだ。
好きな女は守りたい。大事にしたい。そして、抱きたいと思う。
そう思うんだ。
いいオヤジが何言ってると思うだろ?…ずっと思っているんだ。
俺は鷹山を守りたい。守らせてくれ。好きなんだ。…愛おしいと思っているんだ…」

こんな言葉を戯言だと前置きして言う部長…。
言葉通り、怖いんだと思った、…答えが。
私は一体…、どんな返事をしたら…。

「…いいんだ…。鷹山の心に俺は居ないはずだ…」

拘束していた力が少しずつ緩んでいくのが解った。
私の頭の中…、初めて部長と話をした頃からの事が映像となり浮かび、話した言葉は木霊していた。

「…部長」

力無く立っている部長の肩に両手をかけ、精一杯背伸びをした。
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