元通りになんてできない
おまけ
義父と義母
お義父さんに話があると連絡して、私は久し振りに信君の実家を訪れていた。
相変わらず、よく手入れの行き届いた素晴らしい庭だ。広い敷地。
小さな森を思わせる青々とした木立ち。花も沢山植えられている。
モダンな佇まいのお屋敷。
門扉のインターホンを押した。
「はい」
「こんにちは、薫です」
「いらっしゃい薫さん、さあ入って」
「有難うございます、お義母さん」
ギーっと鉄の軋む音がして門扉が開いた。
花の匂いを感じながらアプローチを進んだ。
ドアを開けて待っていてくれた。
「今日は嬉しいわ。お父さんは甘い物あまり好きじゃないから、薫さんと沢山食べようと思って買ってあるのよ」
「あ、私も、これ、持って来ました」
「まあ、有難う、嬉しいわ。より取り見取りね」
「はい」
「紅茶を入れましょう。入って」
リビングに通された。
「座って待ってて、お父さんもすぐ来るから」
「はい」
カチャカチャと茶器を出す音がした。
「やあ、薫さん。元気かね?」
「はい、お義父さんもお変わりありませんか?知里も」
「有難う。元気だ知里も元気だ。変わりない。心配ないよ。
幼稚園でも、しっかりやってるようだよ」