元通りになんてできない
「マナミ?マナミか?」
「…あ、猛……幸、元さん」
「猛でいいよ。…それよりその、事務服。仕事か?…ネイルは?店はどうしたんだ?」
「…うん。…それがね、…偉そうにお母さんにタンカ切って始めたんだけど、…結局、すぐダメに成っちゃって…。だって…何処もかしこもネイルサロンばっかりで…。言い訳だよね、簡単に考えてたから。結局残ったのは借金だけ」
「…」
「あ、でも大丈夫。少しずつの返済しかできないから中々終わらないけど…ちゃんと生活してるから。これでもね、今は、一人暮らし、してるんだよ。…家には帰れないから」
「…そうか」
「…ごめんね。ごめんなさい、本当にすいませんでした。猛…私、一人暮らしして…解ったんだ…やっと。働いて得たお金がどんなに大事なものかって…。実家に居て好きなだけ使うのとは違う。だって…、いくらでも湧いてくるモノじゃないから…。お母さんの言う通り。理屈じゃなく、身にしみて解った。…だから、猛、ごめんなさい。あの頃は何もしなくて、…やりたい放題で…。…今はね、飲みたくなったらカフェオレくらいは自分で作ってる、…当たり前だよね、そのくらいの事…」
「そうか、出来てるじゃないか」
「あ、猛は?」
「俺?俺か…俺は、大人修行中だ」
「修行中?」
「ああ、守りたいものがあるんだ…大好きな、…大事なモノをずっとこの先も見守れるようにな。俺も頑張る。…だから、マナミも頑張れ、な?その内、イベントじゃない本物の結婚、したくなるようにな?」
「…猛…。うん、幸元さん。マナミも頑張るよ」
「じゃあな」
「……じゃあ、ね」